12月7日発売、ハースストーン新拡張「リッチチングの凱旋」!!
目玉は何といっても、「デーモンハンター」から三年ぶりに追加される新クラス「デスナイト」でしょう。
高ポテンシャルなアンデッドミニオン、死体を利用した独自システム、そして何より斬新なのは、デッキ構築に縛りを作る「ルーン」システムです。
デッキを構築する際に血、凍気、不浄の三種のルーンを三個組み合わせ(血・血・凍気、不浄・不浄・不浄など)、その組み合わせによってデッキに採用できるカードが制限されるというシステムです。
例 血・血・凍気の場合
採用可
採用不可
今回の記事は、このルーンシステムについてのお話ですな。意図と影響について、勝手ながら邪推させていただきます。
(1)縛りから生まれる創造性
デッキ構築が制限されるというとプレイヤーに不自由を強いる、創造性を奪うシステムと思われるかもしれません。しかし、実際はその逆です。制限があるからこそ、プレイヤーはデッキ構築の段階からカードのルーン数を見比べ、どの組み合わせにするか頭を悩ませることになります。
まさに、これこそが創造性です。
不自由は創造性を刺激します。
全国のお母さま方が「晩御飯何食べたい?」と聞くのと同じです。何でも作っていいという無限の選択肢からの創造は思いのほか難しいものです。「ハンバーグ食べたい!」なんて言ってもらえれば、ハンバーグを中心に、食べ合わせや栄養のバランスを考えて他のメニューが決まっていきます。「何でもいいよ」なんて返事をしている場合ではありません。前に進むためには、行き先を示すコンパスが必要なのです。
メインディッシュはお決まりですか?
(2)縛りがあるからこそのカードパワー
デスナイトのクラスカード(特にルーン持ちカード)を一枚ずつ見てみると、すべからく基本的なカードパワーが高いことに気が付きます。ブリザードついに気が狂ったか、デーモンハンターの爆速ナーフの再来か、とそういうわけではありません。
ルーンによってデッキ構築が縛られることは、明確なデメリットです。「吸血鬼の血」を採用すれば、デッキのルーンが自動的に血・血・血となってしまいます。そうなれば、凍気・不浄のカードを採用することができません。
デスナイトはルーンによって得意不得意がかなりはっきりしています。
血は除去と回復。
凍気はダメージとドロー。
不浄は展開力と死体補充。
つまり、コントロールデッキにとってかなり魅力的な「吸血鬼の血」を採用すれば、ドローや死体補充に不自由することになるでしょう。「吸血鬼の血」は一見してとても強力なカードですが、こうしたデメリットを背負っているからこそ許されたカードパワーになっています。
逆に言えば、ルーン持ちカードはデッキ構築制限というデメリットを抱えても許されるほどの、魅力的なカードパワーを持っていることが多いです。
(3)縛られない「発見」
先ほど、ルーン持ちカードはデッキ構築制限のデメリットを抱えることでカードパワーが許させるという話をしましたが、世界の理には抜け道がつきものです。デスナイトのルーンシステムにも一つの抜け道が存在します。
発見に代表されるカード生成効果はルーンの縛りを受けません。
たとえ不浄・不浄・不浄でデッキを構築していたとしても、発見からであれば血や凍気のカードを使うことが可能です。先述したようにルーン持ちカードはカードパワーが高いことに加え、デッキに入れることができない、足りない要素を補充することが可能となります。そのため、デスナイトは発見カードの価値が非常に高いです。
大量のカード生成効果を採用することで、色とりどりのパワーカードを連打するデスナイトデッキも出てくるんじゃないかと予想しています。
(3)決定力のあるシナジー不足
実は、デッキ構築と引き換えのカードパワーというのはハースストーンでありふれているものです。
例えば、呪いインプウォーロックで考えてみましょう。インプシナジー、呪いシナジーを使うためにはその関連カードを大量に採用する必要があります。これも広義の縛りといえるのではないでしょうか。
このようなデッキに一貫性を持たせるための縛りが、デスナイトの場合はルーンシステムによって強制的に作られています。
これは新クラスの登場としてはとても優れているように見えます。他のクラスのように合計6拡張分のシナジー要素をいきなり見せつけられては、デスナイトのクラス特性が見えづらくなってしまいます。「雄たけび」「マーロック」「凍結」「呪文ダメージ」「オーバーロード」なんていわれると、何をしたいクラスなのかわからなくなってしまいますよね。デスナイトは「死体」という緩いシナジーを全ルーンで共有しながら、ルーンシステムというデメリットと引き換えにカードパワーを手に入れています。
デスナイトは緩い「死体」シナジーしか持っていないため、ゲームを決めるほどの一貫した強烈なシナジーは持っていません。ウォーロックの「呪い」、メイジの「ヒーローパワー」、ローグの「泥棒」、デーモンハンターの「遺物」などのように、単純にそれだけで勝てるような決定力は持ち合わせていないのです。
カードパワー自体は強力なものがそろっているデスナイト。そのカードパワーの暴力で、他クラスの強烈なシナジーを跳ね返せるかに注目してみましょう。
〈総括〉
デッキ構築に縛りを設けるというシステムは、ハースストーンでは今まで何度も試みられてきました。
ハイランダーはデッキ全体の一貫性を持たせづらいという欠点がありました。
奇数偶数はヒーローパワーによるヒーロー格差と、単調なゲーム展開という欠点がありました。
レナサルは・・・ちょっと話が変わってくるので勘弁してください。
不自由は創造性を刺激します。
ルーンシステムでデッキを組むのは、考えただけでワクワクします。
この胸の高鳴りだけでも、ルーンシステムは成功しているといって過言ではないでしょう。
さあ、
蹄の音が聞こえるか?
やつはもうすぐそこまで来ているぞ。
新クラス、デスナイトの活躍を祝して、今日はインド料理店で鶏肉でも食べに行きましょうか。
「タンドリーチキンぐださい!!」
ってね。
え、寒い?
ああ、リッチキングが近づいてきたせいですね。
僕のせいじゃないですよ。